蟻のエンサイクロペディア

コロニー採集は巣から出てきた新女王やワーカー達を見つけて採集するのとは違い、「アリの巣そのもの」を見つけて採集する方法です。
この為、コロニー採集を試みる過程でアリがどんなところに巣を作っているのかを調べ、探り、実物を目の当たりにすることとなります。
コロニー採集はアリの生息場所について＜実地＞で学べる機会にもなるでしょう。
（※ただし、立派に成長したコロニーを無闇に採集しすぎることは自然環境にも影響を与えるはずです。この点は頭の片隅に置いておきましょう。）

アリの巣は様々な場所に作られており、大きく分けると以下のようなグループ分けをすることが出来ます。

◆土中営巣種・・・土の中に巣を作るアリ
◆樹上営巣種・・・立木や枯枝など植物体の中に巣を作るアリ

土中営巣種の巣は文字通り土の中に作られます。
巣は以下のような場所で見つけることが出来ますが、巣は地中深くへ続いていることが多く、総じて採集は困難です。
現実的には「たまたま女王が地表近くにいて」、「コロニーの一部と共に採集ができた」という状況が採集成功のラインとなるのではないでしょうか。
巣を見つけたときにアリ達を一気に吸引採集できる「吸虫管」で採集するか、スコップ等で周囲の土ごと採集するなどの方法があります。

＜石下＞
石の下に巣本体または一部の巣部屋が見つかるパターンです。
アメイロアリなどの小型種の場合、石の下に巣本体があり女王を含めたコロニーの大部分を見つけることができる場合があります。中型種、大型種、または巣の規模が大きくなるような種では石下に巣が見つかってもそれが巣の一部で、そこから地中へと巣が続いていることがほとんどです。

＜地表＞
地表に空いた巣穴を見つけるというパターンです。
平らな地表に巣口を開けるもの、森林内の斜面などに巣口を開けるものなど場所や種類は様々です。地表に空いた巣口からアリ達が出入りする姿はよく目につき見つけやすい反面、巣口から地中へと続く巣穴からコロニーを採集することは非常に困難です。


※主な土中営巣種
クロオオアリ、クロヤマアリ、クロナガアリ、トビイロシワアリ、オオズアリ、アシナガアリ、アメイロアリ、キイロシリアゲアリなど

土中に作られた巣からコロニーを採集することは困難な為、これらのアリ達は主に「結婚飛行時の新女王採集」で採集を狙うのがオススメです。

樹上営巣種は立木や倒木、枯枝などの腐朽部、樹皮下、空洞部などの空間内を利用して巣を作るアリ達です。
土中営巣種の巣に比べ、巣を発見した場合にコロニー採集しやすいという特徴を持っています。
採集方法は吸虫管を使うか、枯枝や朽木をタッパーなどに入れて採集するという方法があります。


＜立木＞
樹皮下や腐朽部に巣を作るアリ達がいますが、モラル的に生きている立木の樹皮を剥がしたり枝を折ったりする行為はNGです。


＜倒木＞
林床に倒れ落ちた朽ち木の中には空洞部が多く湿り気のあるもの、乾燥したものなど様々で多くの生き物の住処となっています。アリに関して言えば樹皮下の薄い空間を利用するもの、朽ち木内に深く巣を広げるものなどさまざまです。

※倒木（朽ち木）から採集可能な主なアリ
トゲズネハリアリ、ケアリの仲間、オオハリアリ、ウメマツアリ、アメイロアリ、ルリアリ、ヒメアリなど


＜枯枝＞
枯れ落ちた枝の中には中が空洞となっているものがあり、そのような空間を利用してアリが巣を作っている場合があります。特に竹やイタドリの枯れ枝のように内部空間が広く節により区切られたようなものの中には大きな規模のコロニーも巣を構えることができる為、多くのアリが棲んでいます。
採集も容易な為、コロニー採集においては最も成果が期待できる方法だと思います。
採集の際にはタッパーなどに中のアリ達を落として採集するなどの方法があります。


※枯枝から採集可能な主なアリ
ウメマツオオアリ、ミカドオオアリ、ヤマヨツボシオオアリ、ナワヨツボシオオアリ、ムネアカオオアリ、アメイロオオアリ、ヒメアリ、コヌカアリ、シベリアカタアリ、ムネボソアリなど
→「竹から採れるアリ」


＜ドングリ＞
林床に落ちた朽ちたドングリの中の空間にアリ達が棲んでいる場合があります。
主に地表に転がった新しいドングリではなく、腐葉土層に埋もれた古いドングリの内部に見つかります。ほとんどは林床に生息する小型種の巣です。


※ドングリから採集可能な主なアリ
ウロコアリ、ヒラタウロコアリ、ヒメムネボソアリなど