アリを飼育するための容器を「飼育巣」「飼育ケース」と呼んだりします。
飼育巣はショップ等で購入することが可能である他、自作することも可能です。
ショップで販売されている飼育巣は近年急速に進化しており、美しいレイアウトやよく設計された機能性など研究を重ねられた商品を入手することができます。
逆に試行錯誤を繰り返しながら自分のオリジナル飼育巣を自作するという方法も人気があり、「飼育巣を作る」ということ自体もアリ飼育の大きな醍醐味の一つに挙げられます。
ちなみに私は飼育巣については基本的に「自作派」です。
アリを飼育するにあたり飼育巣に求められる要素を以下に挙げてみます。
①アリの居住環境を再現できている
②アリに脱走されない
③巣内を観察できる
①アリの居住環境を再現できている
まず最初に飼育巣がアリ達にとって「生活できる」または「生活しやすい」ものになっていなければ長期的な飼育は不可能です。ここで言う「生活できる」または「生活しやすい」為に必要なものは...
◆適切な湿度
◆適切な空間
<湿度>に関しては飼育するアリが自然下ではどんなところに住んでいるのかを考えます。
土の中や湿った朽ち木の中などに巣を作るアリは巣内が湿潤な環境を好み、乾燥に弱い傾向にあります。これらのアリの飼育には水を吸収し保水する効果のある石膏を床材に使った飼育巣「石膏巣」などを使って巣内の湿度を保ちながら飼育(加湿飼育)を行います。
逆に立木や乾燥した枯枝、枯竹などに巣を作るアリは過度な保湿を好まず乾燥に強い傾向にあります。これらのアリの飼育には巣内に給水を行わないで比較的乾燥気味の環境で飼育できる「木製巣」などを使って飼育(乾燥飼育)を行います。ただし乾燥飼育の場合でも飲水は必要なため、エサ場などに飲水を用意してあげるのを忘れないようにしましょう。
<空間>に関してはアリは基本的に巣穴の中の狭い空間に密集して生活しています。また、アリは巣内の仲間とのコミュニケーションツールとして揮発性フェロモンを利用しているため、広すぎる空間では落ち着かずストレスを与えてしまうでしょう。
アリの巣内をイメージした適切な広さの飼育巣を用意してあげるようにしましょう。
②アリに脱走されない
これは飼育を行う人間側の都合ですが、用意した飼育巣からアリが脱走してしまっては家の中をアリが歩き回ることになり大惨事となってしまいます。
このためアリの飼育巣に求められる大切な要素として「密閉性」があります。
飼育巣には穴などが空いていないことはもちろん、開閉式の蓋がある場合にはピタッと隙間なく密閉できるような容器を選びましょう。
また、エサ場用ケースや飼育巣とエサ場をつなぐ接続チューブ付近もアリの脱走が発生しやすい箇所となります。特に小型種は思いも寄らないわずかな隙間から脱走することがあるので注意しましょう。
③巣内を観察できる
この点も飼育を行う人間側の都合ですが、せっかくアリが落ち着いて暮らせる良い飼育巣を用意できたとしても巣内が観察できなければ元も子もありません。
この為、アリの飼育巣には色の付いていない無色透明なアクリルケースやポリカーボネートケース、ガラスケースなどが使われます。
どのくらい観察のしやすさを優先するか、観察のしやすさよりも巣のデザイン性を優先するか、このあたりは人によって好みが様々です。目的に合った飼育巣を用意しましょう。